ビオトープ管理士ロゴマーク

ビオトープ管理士ってこんな人たち
印刷する

file 009 林 宗弘(はやし むねひろ) さん
【愛知県】

豊田市立西広瀬小学校 教諭
2級ビオトープ施工管理士

学校ビオトープはふるさとづくり!教師として、ビオトープ管理士として

さて、理系では馴染みの深いビオトープ管理士ですが、林さんは社会科の先生。学校ビオトープからまちづくりへ――。その視点は子どもたちのための「ふるさとづくり」でもありました。


林 宗弘(はやし むねひろ) さん

いくつかの学校ビオトープづくりを経験した林先生。

マニアック? いや、「地域の自然を知ることは重要」

 教科書だけで授業を進めることに抵抗があるという林さんは、現場に赴いて収集した資料をもとに内容を組み立てるというスタンスの、社会科の先生です。

 以前は、生きものなどについて調べたりすることはマニアックだと思っていたそう。しかし、国際的な価値が認められラムサール条約湿地に登録された地元・愛知の藤前干潟や、お住まいの豊田市を流れる矢作川について勉強するうちに、考え方が変わりました。「実は身近な生きものが絶滅危惧種であったり、生態系の中で重要な役割を果たしていることに気付いたんです。地域の生きものや自然について知ることは、マニアックどころかとても重要だと思いました」


地域で子どもたちを育てています。

新たな赴任先・西広瀬小学校では、周囲を見て
「このまま環境学習に活用出来る」と直感。地元の
方々の協力もあり、地域で子どもたちを育てています。

ビオトープを再生し環境大臣賞ご自身もビオトープ管理士に

 そして、※全国学校・園庭ビオトープコンクールで国土交通大臣賞の受賞歴のある豊田市立上鷹見小学校に赴任、これが大きなターニングポイントとなりました。さすがに大臣賞だけあって、関わっている方々はみな知識も経験も豊富。なかにはビオトープ管理士の資格をお持ちの先生もいましたが、そのうちに林さん自身が中心的な立場に。活動をいかに〝維持〞していくか、いや、いかに〝発展〞させていくかということは、全ての受賞校に共通の悩みなのかも知れない――。そこで、悩みや課題を分かち合い活動をより前進させるため、近隣の受賞校に声をかけ、交流学習『ビオトープサミット』を開催しました。「完成時の高揚感をいかに次の段階に持っていくかという、一つの提示が出来たように思います」

 次の赴任先、寿恵野小学校にも学校ビオトープがあったものの、9年間も放置され荒れ放題でした。一転して今度は〝再生〞です。当初、地面は踏み固められ、樹木は傷付き、池は外来種のアメリカザリガニでいっぱい。ボタンウキクサやオオキンケイギクなどの特定外来生物もキレイだからという理由で植えられていました。そこでまず林さんは、立ち入って良い場所といけない場所を決めてゾーニング。掲示板やおたより、フォトコンテストなどを通じて、子どもたちとともに啓発に努めました。さらに、調査により絶滅危惧種・ホトケドジョウなどの存在を確認、周知のため歌やバッジを作って関心を高めました。そして、そのきらりと光るユニークな活動に加え、ビオトープの質の高さが評価され、前回のコンクールでは環境大臣賞に輝きました。

 そのような経験と何度かの受験を重ね、同じ年、林さん自身はビオトープ管理士資格試験に合格。「ビオトープ管理士として認証されたことで、さらに自覚が変わったと思います。みんなを引っ張っていくんだと」ご本人曰く、試験ではあんなに苦しんだ法律関係が、皮肉なことに今、役に立っているのだとか。「周りを納得させる根拠になっていたりします(笑)」


いきいきとした子どもたちの表情が何よりの証拠

いきいきとした子どもたちの表情が何よりの証拠。
楽しいことや嬉しいこと、ためになること、
人との付き合い方、時には痛いことや失敗も…。

視点は学校から地域へふるさとはこんなに素晴らしい

 ビオトープ管理士として、総合的な学習の時間では〝環境〞に取り組むことを働きかけているという林さん。現在は、中山間部の西広瀬小学校で教鞭を執っています。周囲には素晴らしい自然があるものの、子どもたちにはビオトープというものの認識が無いもよう。そこで、道を付けるなどして山に誘導し、子どもたちの自然との触れ合いを促しています。題して、登れる山『西広瀬・丸根山ビオトープ』。「多くの野生の生きものに出会える麓では、トンボ池、ホタルの飛ぶ沢、ササユリが咲く山の保全活動に取り組みたいと思います」また、針葉樹の森では『森の健康診断』を実施し、生きものたちのために間伐活動を行う予定とか。「これら全てをビオトープと捉えて、学校を挙げて学習に生かしていきます」同校の伝統、38年続く水質測定を引き継ぎ〝矢作川の小さな見張り番〞とも呼ばれる子どもたち。本来関係の深い川と山とがセットになり、新たな伝統になりそうですね。


西広瀬・丸根山ビオトープ

学校ビオトープの取り組みは自然や生きもののことだけ
ではなく、いろいろなことを子どもたちに教えてくれます。

 しかし、展開はこれに留まりません。「ふるさと再生のESD(持続可能な開発のための教育)活動、という視点も取り入れていきます」周囲には史跡なども多くあるため、歴史的・文化的な要素を取り入れた活動を地域の人たちとともに計画していきたいと言う林さん。学校から地域へ、学校ビオトープからまちづくりへ。社会科の先生でありビオトープ管理士でもあるからこそ生まれてくる発想です。「子どもたちには活動を通してふるさとの価値に気付いてもらい、『自分たちのふるさとはこんなにいいところなんだよ!』と自慢出来るようになってもらいたいんです」


※『 全国学校・園庭ビオトープコンクール』は、学校ビオトープ・園庭ビオトープの普及を目的に、2年に一度開かれています。2013年度は8回目の開催。当会の会員であるビオトープ管理士も、審査委員として協力しています。




ビオトープ管理士の紹介

ページトップへ戻る