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ビオトープ管理士ってこんな人たち
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file 008 靏田 鈴子(つるた れいこ) さん
【神奈川県】

横浜環境保全緑化(株) 代表取締役
1級ビオトープ計画管理士

子どもたちに伝えたい!ビオトープの会社を興したお母さん

もう一つ神奈川県。自然の中でたくさん遊び、自然の本質や大切さを体験的に知った靍田さん。こども環境管理士の資格も取得し、新しい会社を立ち上げ、将来世代のために幅広く活躍されています。


靏田 鈴子(つるた れいこ) さん

幼少時からの環境教育は重要。
依頼を受けた小学校での授業は、
仕事でもあり生きがいでもあります。

海・山・川…逗子の自然に育まれ、母として

 靍田さんは、生まれも育ちも神奈川県逗子市。風光明媚で著名人も多く住む素敵なまちです。庭師であったお父さまの子育てはとてもユニークで、海、山、川で五感をフルに使い、いわば、自然が先生の体感教育を受けて育ったのだそう。「遊び道具の竹とんぼや竹馬、脚立などは全て父が作りました。今思えば、日本の伝統や文化は自然と密接に関係していることに、そのようなことを通じて気付いたのかも知れません。また、自然を知ることで自ずと知識や生きる力が付くことを知りました」そして時は経ち、3児の母となった靍田さんはこう思います。「人間の作る構造物は必ず壊れます。一方、自然のものは不動なものだと思いますが、その自然は失ってしまうと二度と元には戻りません。母として、そのことを未来を担う子どもたちに伝えていきたいと思っていました」

 自然は私たちの生活を支えている大切なもの。そのことは、現代を生きる私たちだけではなく、子どもや孫たち、さらにずっと先の将来世代だって同じです。そのような想いを抱きつつ造園業のお仕事をしていた靍田さんは、ビオトープや生物多様性という言葉が気になり始めました。調べていくうちにビオトープ管理士の資格試験を知り、挑戦してみることに。そして見事に合格、今の活躍に至ります。


私たち日本ビオトープ管理士会の研修にて

私たち日本ビオトープ管理士会の研修にて。
資格を取得した後も勉強、自己研鑚は重要です。

米軍基地での提案小学校での環境教育も

 現在、米軍基地内の緑地管理をしている靍田さん。「地域の固有種の育成や外来種の駆除などを提案し、実行しました」提案したことが採用されるなんて羨ましい限りです。「でも、基地はまだまだ生態系の視点による緑地管理ではないのが現状です」それは日本の自治体や国も同じ。しかし、世界は確実に生物の多様性を基本とした持続可能な社会に向け動いています。ビオトープ管理士としての挑戦はしばらく続きそうですね。


分かりやすく人に教えるということは、
それだけの知識や経験が背景にあり、かつ、
きちんと整理されていることが必要。

 一昨年にはもう一つ、自然の再生や保全、ビオトープに関する情報発信と具体的な取り組みを目的とする新しい会社を立ち上げました。「〝こども環境管理士〞にも合格したんです。データベース(有資格者の名簿)をご覧になった小学校から連絡があり、全学年を対象に環境教育の授業をして欲しいとの依頼を受けました」仕事としての環境教育。しかし、 全学年ともなると発達段階もまちまちで準備もたいへんそう。「学年によって構成を変えたり、言葉の表現方法を変えたり。また、理科と同じような内容にならないよう、触れる・嗅ぐ・目で見るなどの体感を重視した授業にしました」ちなみに、ビオトープ管理士は技術者としてだけではなく、※環境教育の指導者としても公に認められているのです。「子どもたちの反応や先生たちの意見を受けて順応的に内容を変化させるなど、1年生から6年生までの全クラスで授業することは難しくもありますが、楽しい時間でもあり、とても勉強になりました」

 夏休みには自宅を開放して木工教室を開催、小学生や保護者のみなさんに自然のことを知っていただく機会づくりが出来ました。お仕事としてはもちろんですが、生きがいを感じられることは人生においてとても重要なこと。幅広く活躍されている靍田さんは毎日がとても充実しているようですね。「生態学をきちんとした知識として、そして何よりも、このように体感として学ばせることが大切だと思います。幼少時から教科として導入されることを切に願います」


また、相手によって内容を作り替えるということも、
そのようなバックがあってはじめて可能となります。

子どもたちが誇れる地域にそして美しい地球へ

 しかし、市の河川土木課や環境課にはビオトープ管理士の職員がおらず、環境の行動指針は生物多様性の視点を欠いたまま作成されていたためか、地域にはまだ学校ビオトープや園庭ビオトープは無いのだとか。「一方で、園庭や屋上でのビオトープづくりに関心を示され、地元の幼稚園からお声がけをいただきました。呼び掛けや行動が一つずつ発信力になり、子どもたちに大切なことを伝えていければ…」 そして生物多様性をテーマにしたレポートを提出したことがきっかけで市の環境審議委員に選ばれた靍田さんは、地域と将来世代のことを想い、ビオトープ管理士の立場から積極的に発言されています。「日本の真の美しさが伝統文化とともに歩み、逗子が子どもたちの誇りとなるよう、また美しい地球へとつながるよう活動していきたいです」

 今後は、経済的に持続可能な事業活動、地域や市への情報発信、ボランティアなどをテーマとして、多くの人が活動出来るよう働きかけていくそうです。


※『 ビオトープ管理士資格試験』は環境教育等促進法に基づいて環境人材認定事業に登録されており、よって、ビオトープ管理士の有資格者は技術者としてだけではなく、環境教育の指導者としても公に認められています。
(参考:環境省サイト「環境人材育成・認定等事業データベース」)




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