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ビオトープ管理士ってこんな人たち
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file 007 岸 しげみ(きし) さん
【神奈川県】

茅ヶ崎野外自然史博物館 事務局長
1級ビオトープ計画管理士 / 1級ビオトープ施工管理士

1級取得、生きものに詳しい市民から〝ビオトープの専門家〞に!

活動のためにビオトープ管理士の資格を。そして1級の肩書きを2つとも取得した岸さんは、一市民としてではなく〝専門家〞として、よりパワフルに幅広く活動されています。


岸 しげみ(きし) さん

インターネット配信のテレビ番組
『湘南nature チャンネル』では企画とMCを担当。
写真は、子どもたちと自然について、
地域の中学校の校長先生たちと。

意見が認められるようビオトープ管理士の資格を取る

 子どもの頃から自然が大好き。自然の中で遊び自然からいろいろなことを学んだ岸さんは、大人になっても観察会を開くなど、多くの方々に自然の素晴らしさを伝えていました。

 そんな1990年のある日、思いもよらぬ光景が。観察会で訪れた谷戸(地域によっては谷津、谷地とも)が埋め立てられていたのです。残念なことに当時はいたるところで谷戸が埋められていました。利用価値が低いとして都市化の波から取り残され、多くの野生の生きものたちがくらしている、あるいは逃げ込んでいる谷戸。「このまま失われてしまったら、生きものも私たちも困ってしまう」岸さんたちは立ち上がり、自然を守るために活動を始めました。

 そのようななかで岸さんが資格を取ろうと思った理由は明確です。「協議会に呼ばれるようになっても、〝生きものに詳しい市民〞ということでは面識の無い方々、特に行政に対してインパクトが大きいとは言えません。そこで〝動植物をはじめ幅広い知識を持った専門家〞として臨み、意見が認められるよう、ビオトープ管理士の資格を取ろうと思ったのです」


谷戸の保全管理作業のようす

谷戸の保全管理作業のようす。
現在では、盛り土や畑化から守るため、1,400m2
湿地を借り、保全管理の研究や実習も行っています。

ズバリ、ビオトープ管理士となって良かったことは?

そして、1級ビオトープ計画管理士と1級ビオトープ施工管理士の資格を取得した岸さん。1級の、しかも計画・施工の両部門をお持ちの方は、全国でもまだそれほど多くはありません。「資格を取って良かったことはまず、出題範囲が広いのでいろいろな分野の基礎が身に付いたこと、行政マンの気持ちが分かるようになったこと、そして、1級を両部門とも持つと周りの対応が変わったことです」


地域の自然・環境に関する豊富な知識をもとに、冊子などの執筆依頼も

地域の自然・環境に関する豊富な知識をもとに、
冊子などの執筆依頼も。ビオトープ管理士として
伝えたいことがたくさんあります。

 岸さん曰く、特に3つ目の効果が大きいそう。「肩書きがなければフツーのおばさんですが、名刺に2つの1級ビオトープ管理士を並べているだけで、一目置いてもらえるようになりました。現在も茅ヶ崎・藤沢の谷戸の保全のため協議会等に自然団体枠で呼ばれていますが、発言は専門家のものとして受け取っていただけていることがありがたいです。また、文教大学湘南総合研究所の客員研究員としてお声がけいただいたこと、藤沢市発行の自然関係の書籍を2冊書かせていただいたことは、1級ビオトープ管理士の肩書きがあったからだと思います」とはいえ、ここまで資格が活かされているのは、やはり岸さんの自然に対する情熱と行動力があってこそ。

 ちなみに、ビオトープ管理士、特に1級には、自然や環境に関する何かしらの活動をされている方がとても多いというのもまた大きな特徴です。ここまで広範な事柄を知っている必要があるのか、もっとカンタンな試験でも良いのではないのか、総合得点で合否を見れば良いのではないのか…など言われることもままあるビオトープ管理士の試験ですが、現場やフィールドでの経験・体験を重視し、〝本当に活動出来る人〞が認証されているのだということを、現実が証明しているのではないかと思われます。だから、ビオトープ管理士はすごいんです。


マユタテアカネを見せる昆虫博士の中学生

原点とも言うべき観察会にて、マユタテアカネを
見せる昆虫博士の中学生。次世代も着実に育っています。

知識や情報を還元〝すごい仲間〞が増えていけば…

 ビオトープ管理士として得た知識や経験、生きものに関する情報などを多くの方に伝えなければいけないという想いから、現在ではインターネットTV番組※『湘南NATUREチャンネル』を制作・配信している岸さん。その他にも、野外を展示物に見立てたウェブサイトを作り、投稿や質問を通じて地域の自然に関する情報を蓄積しています。もちろん、生の自然に直に触れる、〝自然大好き人間〞を増やすための観察会も。「今年から、1400m2 の湿地を借り、保全管理の研究や実習も出来るようになりました。生きものについては各分類群のスペシャリストがおり、本格的なインタープリター(案内人)やビオトープ管理士を目指す人にも人気となっています」

 総合的な学習の時間への対応のほか、講演会の講師やパネリスト、自然調査などの依頼もありお忙しい岸さんですが、今後の展望は? 「いろいろな地域の自然、地域の生物多様性を守りたいと思います、その方法の一つとして、私たちが長い間蓄えてきた自然の事象や先進的な取り組みなどを、ネットTVを通じて全国の有資格者にお伝えしたいです。そして、それぞれが得意分野を持ち寄って情報交換出来るような場となり、ビオトープ管理士自らがさらに資格の価値を高め、もっと世の中に必要とされる資格に出来れば。〝やっぱりすごいな、ビオトープ管理士は〞と言われるような仲間が増えていけば嬉しいです」





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