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ビオトープ管理士ってこんな人たち
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file 004 岩瀬 森の助(いわせ もりのすけ) さん
【岩手県】

(株)山二 代表取締役
1級ビオトープ計画管理士 / 1級ビオトープ施工管理士

社寺の環境×ビオトープ!資格を活かす、資格で生きる

自然のために何かをしたいという意志と、元来のなりわいとの融合。それは、長年にわたり培われた知識や技術、伝統と、〝ビオトープ〞という新しい概念の融合でもありました。資格を活かし資格で生きる、とても羨ましい岩瀬さんの事例です。


岩瀬 森の助(いわせ もりのすけ) さん

盛岡天満宮にて。
境内には、都市部にあってはたいへん貴重な
自然が残されています。そこにビオトープという
新しい概念を取り入れ、エコアップを図ることで、
ビオトープネットワークの拠点とすることが出来ます。

自然のために提案出来るのでは‐資格取得を目指したわけ

 朝の連続ドラマ『あまちゃん』で大注目の岩手県。その舞台は海なのですが、今回は山のお話です。 素敵なお名前のイメージどおり、1級ビオトープ管理士の岩瀬さんは家業の山林業に従事しています。木材の輸入が自由化されて以降、林業はとても厳しい状況に置かれているのですが、岩瀬さんの心を痛めているのはそれだけではありません。止まらない自然破壊です。

 首都圏などとは異なり、見渡せば豊かな〝みどり色〞のものが目に映る東北地方ではありますが、問題はその〝みどり〞の中身。自然とより共存すべき農業や酪農などの第一次産業は、まるで工場のように近代化され、自然への負荷は留まるところを知りません。もともとその地域にあった〝本当の意味のみどり〞である自然、ビオトープとそこに成り立つ健全な自然生態系は、刻一刻と失われているのです。何とかしたい、その思いで樹木医などいくつもの関連資格をすでに取得し活動していた岩瀬さんは、ある時ビオトープ管理士の資格に出会います。「自然が失われていくことに対していろいろな提案が出来るのではないかと思い、受験しました」そして、合格率が20%程度という難関の1級ビオトープ管理士を、施工部門、計画部門とも取得したのです。


盛岡天満宮にて

盛岡天満宮にて

意志となりわいの融合県外からの受注も増えた

 現在、岩瀬さんは、社寺境内の環境整備を中心にお仕事をしています。境内や裏山、社寺林・鎮守の森などには、樹木を中心とした貴重な自然が残されていることが多くある一方、残念ながら生物の多様性が著しく失われてしまったものも多いのだそう。そこで岩瀬さんは、長年にわたり培われた知識や技術、伝統に〝ビオトープ〞という新しい概念を取り入れ、整備の提案や作業を行っています。

 「会社を立ち上げて5年ほどですが、ビオトープ管理士の資格を取ったことで、県外からの受注も増えています」環境の時代を迎えたと言われてはいますが、実際のところ、反響はどうでしょう?「社寺でも自然に理解や関心のある方々には受け入れていただけるし、特に世代交代した比較的若い方々には興味を示していただいています」


啄木も歌に詠んだという狛犬とともに

啄木も歌に詠んだという狛犬とともに。
鎮守の森を守り自然と伝統を守るのが、
岩瀬さんの仕事です。

 そうなると、あやかろうとする同業者も。しかしそこはオリジナルの岩瀬さん、まだまだ追随を許しません。医師や弁護士でも同じですが、黙っていても仕事の方からやって来るという時代はとっくに昔。免許や資格を活かせるかどうかは本人次第、まさにその好例に思えました。何よりも、自然のために何かしたいという意志と、元来のなりわいとを融合させられるというのは、社会の一員として羨ましい限りです。  しかし、岩瀬さんはここに留まらず、更なる展望を持っています。「今後は、林業の現場でビオトープを重視した作業が進められていくよう、研究や研修、提案も行っていきたいと思います」


安全確認も怠らず

安全確認も怠らず。
作業やイベントを行う際には、現場や道具などの
事前チェックから万が一の場合の対応まで、
細かく気を配るのも仕事です。

岩瀬さんの活躍で見えたビオトープ管理士に必要なこと

 ところで、岩瀬さんの名刺にはたくさんの資格や多岐にわたる事業内容のほか、「行政書士」も? すっかり〝この道一筋〞の方なのかと思い込んでいましたが、これで合点がいきました。実はこのことは、ビオトープ管理士に必要な要素でもあるのです。

 ビオトープ管理士資格試験では、生きものに関する知識や考え方、技術的なことはもちろん、いっけん無関係に思える法律や制度、条約などについても出題されます。なおかつ総合点ではなく、択一問題で言えば、生態学、ビオトープ論、環境関連法、専門科目(計画部門または施工部門)の試験科目それぞれで基準をクリアしていなければ合格することが出来ません。つまり、自然に関する資格ではあるものの、たとえば生きものだけにやたらと詳しいだけではビオトープ管理士になることが出来ないしくみになっているのです。それはなぜか?世の中のルールである法律や制度を理解していてはじめて、知識や技術を充分に活かすことが出来るからです。

 近々、論文を発表したいという岩瀬さん。内容は、人工造林補助金の変遷の法的分析と、人工造林の植栽に対するビオトープの観点の導入提言。木材供給だけではなく生物多様性の基地としても重要な森林に、ビオトープという新たな視点を取り入れ、それに沿う事業については特別の補助金を加算するなどしてより良い森づくりの動機付けをしてはどうか、というものです。

 知識と技術と志。現場から提言や発信が出来るというのは、やはりビオトープ管理士である岩瀬さんならでは。





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