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ビオトープ管理士ってこんな人たち
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file 003 岸野 純一(きしの じゅんいち) さん
【鹿児島県】

青楓緑化(株) 代表取締役
1級ビオトープ施工管理士

伝統技術で甦らせ次の世代へ!伝えたい原風景がここにある

次はベテランの方。鹿児島県で初の1級ビオトープ施工管理士だった岸野さんは、技術士との相乗効果もあり専門性を高く評価され、県内のパイロット的な環境事業を委託されました。日本の原風景を再生し次世代に伝えていくこと、それが願いです。


岸野 純一(きしの じゅんいち) さん

自社の休耕田でビオトープの管理作業。
従来良しとされていたように一辺倒に刈れば
良いのではなく、生きものの視点で刈る草の種類や
刈り方、刈る場所などを考えなければなりません。

世界の先進事例を見た転換点技術士とともにトライ

 造園業に携わり、かつてはゴルフ場を造る仕事が多かったという岸野さん。「〝自然を守っている〞と思ってやっていましたが、今にして思えば実に多くの自然を壊してきたと思います」その当時は、自然とはどういうものなのか、あるいは自然を守ることの意味、自然の守り方などが、まだよく知られていなかった時代。同じような思いを抱いている方は多いのではないでしょうか。

 岸野さんはもともと興味があったこともあり、自然環境に関する研究会に所属していました。そこで知り参加した日本生態系協会のツアー『欧州ビオトープネットワーク調査団』では、イギリス、スイス、ドイツを巡り、ビオトープ事業の先進的な事例などを目の当たりに。大きな転換点となりました。

 その折にビオトープ管理士の資格制度が創設されることを知り、受験。「技術士の建設部門にも挑戦中だったため、勉強は環境への知見を高めるうえで相乗効果があったように思います」実際、1級ビオトープ管理士と国家資格である技術士の両方にトライし、相乗効果を狙う方は多いと聞きます。岸野さんもその一人でした。


メダカの学校岳の池での活動

メダカの学校岳の池での活動。
ビオトープ管理士の資格を取得する
以前からのライフワークです。

合格したことがニュースにそして専門家としての活躍

 その後何度かの挑戦を経て合格した岸野さんは、地元・鹿児島県で初の1級ビオトープ施工管理士ということもあり、新聞などで話題に。「ビオトープ管理士として高く評価していただき、学識の委員や、アドバイザーとしての関わりが多くなっています」 ニュースになったこともあってか、『地域用水環境整備事業』、『生物多様性対応基盤促進パイロット事業』といった県の事業の学識委員、姶良市の環境基本計画策定にあたっての審議委員長や、激甚災害から復旧した甲突川に関する環境整備委員会のアドバイザーを、ビオトープ管理士の立場として委嘱されました。いずれも、人と自然の共存を取り計らう、重要な事柄です。

 「また、1級のビオトープ管理士と技術士の資格を持っていることで、前述のパイロット事業におけるビオトープの設計や施工、現場での指導、技術管理などの仕事を委託されました。甲突川河川敷の草刈りの手法を調査・研究するための試験施工なども」相乗効果は資格の取得に向けた勉強だけではなく、こうした先進的なお仕事にも。専門分野を確立することは、他の方には真似の出来ない大きな強みとなるようです。

 ところで近年、県内の行政機関における河川、耕地、林務などの部署では生物多様性への認識が高まりつつあり、それに伴って、ビオトープ管理士もより評価されつつあるのだそう。そのような事業にはビオトープ管理士として積極的に関わっていきたいという岸野さん、お仕事以外にも、社会貢献としてさまざまな活動をしています。たとえば、ビオトープ管理士に合格する以前から続けている、地域の環境団体が所有するビオトープの維持管理作業や修復作業のサポートは、いわばライフワーク。日本ビオトープ管理士会の鹿児島支部『ビオトープかごしま』でもメンバーとして活躍しています。そのようなフィールドでの活動の経験も、業務のなかでも活かされているのですね。


有里ホタルの里

有里ホタルの里

心を惹かれるの原風景は「持続可能性」の重要なポイント

 「私の夢は、日本の失われつつあるものを描き続ける画家の原田泰治さんがスケッチしにやって来てくれそうな、原風景を再生することです」そのような環境に育った者でなくとも、なぜかしら心を強く惹かれる日本の、地域の原風景。それは単なるノスタルジーに留まらず、自然と共存する持続可能なまちづくり・くにづくりを行ううえでの重要なポイントでもあります。


丹生附休耕田ビオトープ

丹生附休耕田ビオトープ
どちらも懐かしさと暖かさを感じる日本の原風景ですが、
それは、自然と共存する持続可能なまちづくり・
くにづくりの重要なポイントでもあります

 「当該地の特性やポテンシャルを深く探求して、それを活用するような提案を心がけたい。その際は、自然の摂理にかなっている伝統技術の活用が優位です」脈々と息づく伝統技術、それもそのはず、伝統は地域の自然の上に成り立ち、必要以上に自然に負担をかけないもの(そうでなければ絶えているはずです)。そのような伝統技術をもって残されたふるさとの原風景を甦らせ、次の世代に伝えていきたいという岸野さん、失礼ながら、懐かしく暖かい日本の風景に描かれる人物たちにどこかしら似ているような気がします。


 「日本らしさ、ふるさとらしさなど、その片鱗が僅かでも残されている今ならまだ、〝らしさ〞を再生し取り戻すことは充分に可能だと思うんです」





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